2016.10.01

拈華微笑(ねんげみしょう)

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2500年もの昔、釈迦牟尼世尊(しゃかむにせそん)は霊鷲山(りょうじゅせん)での説法のある日、無言で一輪の花を指し出されました。大勢の弟子たちが戸惑い見つめる中、高弟の摩訶迦葉(まかかしょう)ひとりが微笑でそれに応えました。釈迦は告げます「われに正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)、涅槃妙心(ねはんみょうしん)、実相無相(じっそうむそう)、微妙(みみょう)の法門(ほうもん)あり。不立文字(ふりゅうもじ)、教化別伝(きょうげべつでん)、摩訶迦葉に付属す」と。釈迦が悟った真理は仏法として、この瞬間に以心伝心、迦葉尊者に伝えられたのです。

禅はこの原点を最も大切にしています。二祖迦葉から三祖阿難と、そして25代の尊者に次々と伝えられた仏法はやがてその原点から離れていきます。28代目の菩提達磨(ぼだいだるま)は釈尊の原点に立ち返える事の大切さを説き、インドでの教化のあと中国に入りその仏法を慧可(えか)に伝えます。ここに禅宗の初祖、菩提達磨と二祖慧可が誕生します。

数年前、私は大型トラックが行き交う近くの国道前のスタンドでガソリンを入れていました。すると隣に建つ小さなホテルからアメリカ人の家族らしい集団が歩道に出てきて、小学生らしい兄弟が追い駆け合いをはじめ一人がふざけて車道に飛び出そうとしました。その瞬間、大きな体の父親が寸前でその子供の手を取り、歩道に引き戻したかと思うとその尻を大きな手で何度も叩き、そして二人は大粒の涙を流しながら無言でいつまでも抱き合っていました。全てはあっと言う間の出来事でしたが、親の愛情と子の信頼に言葉も理由も要らない。不立文字、教化別伝、心から心への強さと大切さは他のすべてを無用にすることを知りました。